第9章 トクベツ授業
陽が傾く頃にはテーブルに突っ伏して、もう脳みそも機能停止状態になっていた。
「お疲れさん。今日はもう家帰ってゆっくり休めよ」
頑張った頑張った、と私の頭をポンポンとする功平は、先程の鬼の形相が嘘かのように優しい。これは口が裂けても言えないけど・・・。
「・・・そんな余裕ないよ、もっと勉強しないと絶対テストやばいもん」
「下手にし過ぎると余計分からなくなるぞ」
「でも・・・」
今まで殆どテスト勉強をしなかった私は、案の定テストの点が良いという訳ではない。逆にきちんと勉強をしてみると、勿論のこと点数が良くなる。
なのに功平は逆のことを言う。寧ろ睡眠が大事だから、勉強はそこそこでいいと。それは頭の良い人のみ有効であって、そうでない人は寝る間も惜しんで勉強する方がいいに決まっている。
「いいから、俺の言う通りにしてみろって」
「そんなこと言われても・・・」
「とりあえずは今日だけでいいから、な?」
「・・・・・・」
どうして彼はこんなに自信満々なのか。他人事だから?・・・でもそうだったら、自分の勉強時間割いてまでこんな熱心に教えてくれる訳ないか。
拭えない不安を抑えて頷けば、彼は満足気に笑う。
「明日は俺ん家でやろう」
「え、どうして?」
「それは明日のお楽しみ」
ニッと笑う功平が何を考えているのか、今の私には到底分からない。
その日は、不安でモヤモヤする気持ちを押し隠す様にして言われた通り勉強をせずに寝た。
「お邪魔します」
昨日言われた通り、功平に連れられて笹倉家にお邪魔する。竜を抱っこした琇と陽太が出迎えてくれた。
すると、功平は陽太を連れて階段を登り始め
「じゃ、俺は部屋にいるから」
と一言。
(え!?ちょ、どういうこと・・・!?)
1人で勉強しろということなのか。だとしたら別にここに来る必要ないよね・・・?と、目の前が真っ白状態の私の肩にポンと手が乗せられた。
「大丈夫、今日は俺が見るから」
「へ・・・みる?」
「そう、ともの勉強、今日は俺が付き合うよ」
・・・はい?
「俺、家庭教師のバイトもしてるから安心して」
えぇぇー!?何それ初めて聞いたよ!?てか、“も”って何?掛け持ち?
また新たなことが頭の中を駆け回る。