第8章 まさかの展開
「ちょっとデカイな(笑)」
割と背は高い方の私でも、更に背の高い功平の洋服では袖から指先が出るか出ないか。こうして着てみると、功平と悠輔がどれだけ自分より大きいかが分かる。
「功平くん達って着痩せするタイプなんだね」
「そう?つーかお前、コレ着てるといつもより小さく見える」
「え、本当?普段小さいなんて言われないから、ちょっと嬉しいかも」
昔から背の順では後ろの方で、学年の平均身長は必ず越えていた。女の子らしい低身長を羨ましいと思う私にとって、こういう言葉はかなり嬉しい。
「功平くんのパーカー大きいから、指先まで暖かいや」
「それは良かった。まだ寒かったら他の服貸すから、ちゃんと言えよ?」
「うん。でも、さっきまで功平くんが着てたから暖かいし、大丈夫!」
「・・・そっか、なら良いけど」
「あー、だから悠くんと同じ柔軟剤の匂いとは別に、ほんのり功平くんの匂いがするんだ」
お風呂に入る前に貸して貰った悠輔の服は洗いたての物で、私のとは違う柔軟剤の匂いがした。そしてさっき功平に着せて貰ったこのパーカーからは、その柔軟剤の香りは勿論、それとは別に着ていた彼の匂いがほのかに香る。
「はぁ・・・お前なぁ、」
「あ、違うよ!臭いとか、そういう意味じゃなくて・・・」
「あーもう分かったから!・・・ほら、時間も遅いし、もう寝るぞ!」
「え、でも功平くん、まだ髪の毛乾かしてな・・・」
「もう乾いた」
お前みたいに長くないしと、彼は私の腕をグイグイ引っ張って陽太の部屋まで誘導する。そして彼は、ちゃんと私の布団が用意されているか確認してから、私を部屋に入るよう促す。
「今日は割と陽太の寝相も良いみたいだけど・・・」
「大丈夫だよ、それは全然心配してないから」
「・・・まぁ、俺向かいの部屋だから、何かあったら言って」
「うん、分かった。ありがとね」
誰も起こさないように小声でヒソヒソ話す。
「じゃあ、おやすみ、功平くん」
「・・・おやすみ・・・・・・とも」
私の頭を軽く撫でた彼は、優しく笑って自室に入っていった。
寒くて布団の中で蹲ると、パーカーの袖が鼻先に当たり必然的に匂いが鼻腔を通る。そして不意に、今日初めて彼から名前を呼ばれたことに気づく。隣に眠る陽太を眺めながら、私はいつの間にか意識を手放していた。