第8章 まさかの展開
「・・・と言う訳で、ともは今夜ウチに泊まるからな」
「よ、宜しくお願いします・・・」
「・・・こちらこそ」
バイトから帰宅早々に今回の経緯を聞き、驚いて呆然としている功平。まぁ、それは私も同じなんだけど・・・。
「・・・あれ、お前だけ?」
「あ、うん。秀さんは陽太寝かしつけるからお先にって。悠くんもさっきまでいたんだけど、練習で疲れたみたいで寝に行っちゃった」
お風呂上がりの功平とリビングに2人。首に巻いたタオルで髪をワシャワシャと拭きながら、ソファに座る私の隣に腰を落とす。
「で、どこに寝んの?」
「陽太の部屋だよ」
「あいつ寝相悪いけど大丈夫?」
「うん、多分(笑)」
テレビも何もついていない為、功平が頭を拭くのを止めると無音になる。シーンとした時間が3秒程流れた頃、功平がポツリと呟いた。
「・・・連絡してくれれば良いのに」
「え?」
「お前が今日1人って知ってたら、俺もお前をここに連れてきた」
「・・・うん?」
「・・・意味分かる?」
分かりません。言葉に出していないのに、彼は私の顔を見るなり落胆したように溜息をつく。
「な、何・・・?」
「・・・何でもない」
「何でもないって、」
「その服、悠輔の?」
話を逸らすように彼に指摘されたのは、今私が来ている服。それは間違いなく悠輔から借りた物。私は躊躇うことなく頷く。
「・・・次からはそういうこと、俺にもちゃんと話せよ」
「そういうこと?」
「そしたら今度は、俺が迎えに行く」
「・・・うん?」
「分かった?」
「う、うん」
さっきまでちょっと怖い雰囲気を纏っていた功平も、今の話で少しだけ気が抜けたよう。分かったと返事をした私の頭を、ワシャワシャと撫でる。フワッと香るお風呂上がりの匂いに、少し安心する。
そんな時に出た、クシャミ。
「寒い?」
「あ、ううん、大丈夫!」
「・・・これ、着て」
そう言って、彼が着ていたパーカーが私に掛けられる。
「え、でも、これじゃ功平くんが・・・」
「部屋にあるから大丈夫。ほら、腕通して」
「じ、自分で出来るよ!」
「いいから」
彼は私の腕を掴んでパーカーの袖に通し、前のファスナーを閉めるところまで・・・要するに、着せてくれた。
もう、恥ずかしいのなんのって。