第8章 まさかの展開
「そっか、練習お疲れ様!気を付けて帰ってね」
『・・・じゃあ、帰り着くまで付き合ってよ』
「うん、いいよ!寧ろ私もその方がありがたい!」
寒いけど帰ってもどうせ暇だし、せっかくの楽しい時間を終わらせたくなかった。
『ちゃんと厚着してる?』
「うん。マフラーもしてるし、パーカーも着てる」
『ならいいけど。つーか何でこんな寒いのに川?普通カフェとかじゃないの?』
「あー・・・思いつかなかった」
『はぁ?』
「・・・どうせどこ行っても暇だもん」
『・・・あれ、妹は?』
ちょこちょこ連絡をとっているので、彼は今両親が家をあけていることを知っている。
「友達の家にお泊りしに行っちゃった」
『へぇ』
いくつかやり取りをしていると、段々電話の向こうから聞こえる声に違和感を感じる。
「悠くん、大丈夫?寒い?」
『・・・何で?』
「段々息上がってる気がするんだけど・・・」
『ん〜・・・まぁ大丈夫』
「そう?まだ家まで距離あるの?早く家帰って暖まらないと・・・」
『・・・もーちょい』
とても寒がってるみたいだし、早く帰って身体を暖めた方がいい。その反面、楽しい時間が終わってしまうことに少し寂しくも思う。
『はぁ・・・っ、着いた・・・』
「あ、着いた?お疲れ様!じゃあ、早く家に入って身体暖めてね」
『・・・・・・』
「ん?悠くん、悠くーん?」
『「・・・・・・マジで何やってんの?」』
ガサッと後ろで音がした後、同じ言葉が同じタイミングで電話と後ろから聞こえた。もちろん、同じ声で。
「・・・へ?何で、っ痛!」
「本当にこんな所にいたのか・・・」
「悠くん、何でここに・・・?」
ふり向こうとした私の頭にチョップをかましたのは、本当なら家に帰り着いているはずの悠輔だった。
「いつまでもこんな所にいたら風邪引くって」
「大丈夫だよ、ちゃんと厚着してるし。・・・じゃなくて、何で悠くんがここに?帰ったんじゃなかったの?」
「・・・今から帰る」
「・・・答えになってない」
「いいから、帰んぞ」
「ん〜・・・」
「ほら」
座っている私の腕を掴んで強引に引っ張り立たせた悠輔は、有無も言わさず駅の方に私を導く・・・・・・と思いきや、
「ちょ・・・こっち、駅とは逆・・・」
まさかの駅をスルー。