第8章 まさかの展開
家族にも既に志望校合格の報告をしており、帰宅した後に自宅でもお祝いをして貰った。
あれから数日後のある日
「え、泊り?」
学校から帰宅すると、自室で何やら荷造りをしている様子の妹。聞けば友達の家にお泊りするとかで、しかも帰って来るのは明日の夜なのだそう。
「え~!?それじゃあ今日私1人なの?」
「姉ちゃんも友達と一緒にいればいいじゃん」
「そんなこと急に言われたって~・・・」
実はここ数日、用事で母が里帰り中。ちなみに父は単身赴任中。妹がいないとなると、私はこの家に1人なのだ。
支度を終えた妹が家を出て、とうとう本当に1人になってしまった。
(・・・暇~・・・・・・)
音楽を聴きながら雑誌を読んでいたがそろそろ飽きた。話し相手もいないとなると、特に趣味もない私はかなり退屈。
「・・・・・・・・・散歩でも、するか」
家に1人でいてもすることがないので、気晴らしに外に出ることにした。どうせ時間に制限もないし、と思いながら歩いていると、いつの間にか学校の最寄り駅近くまで来てしまっていた。人通りの多い駅前を避け、近くにある人気の少ない川辺のベンチに座る。
もう冬と言える季節。夜は冷え、水辺は余計に寒さを増す。マフラーにめいいっぱい顔を埋め、パーカーのポケットの中でカイロを握る。・・・結局外に出てもすることがないことに気付き帰ろうかと考えている時、カイロを握っていない方の手に振動が伝う。
「・・・はい、?」
寒すぎてマフラーから顔を出す気にもなれず、確認もしないまま電話に出る。
『あ、俺!』
「・・・悠くん?」
『うん。ってか確認しないで出たの?』
「あははー、そう(笑)」
やっと退屈から解放され、気持ちが満たされる。電話からは、悠輔の少し震えた息混じりの声が聞こえる。
『・・・あれ、外?今どこいんの?』
「あ、それ今私が聞こうと思ってたのに」
『さっきからお互い寒すぎて声震えてるもんなー(笑)。で、そこどこ?』
「学校の最寄り駅近くの川だよ」
『は?何でそんな所にいるの?』
「暇だったからお散歩しようかなーって。悠くんは?」
『練習終わって帰ってるとこ』
はぁ、と寒そうな息が聞こえる。