第7章 すれ違う気持ち
「・・・兄貴から、お前が駅にいるかもって連絡来てさ」
「へ?何でそんなこと、」
「お前が悩んでるって」
え、まさか、それだけの為に・・・?
「・・・もしかして、走って来たの?」
「バイト先から少し距離あるし、間に合わないと思って」
案の定ギリギリだったけど、と笑う彼の隣で、私はバイトという言葉にピクリと反応した。
「・・・そっか、バイト、だったんだよね」
「そうだけど・・・どうした?」
さっきと違う表情で真剣に私に向き合う彼。
「・・・ごめんね、私のせいで・・・」
「え、いきなり何・・・」
「だって忙しいのに・・・ごめん、なさい」
キョトンとする彼と距離を取って俯く私。そんな私に彼は、ゆっくりでいいから話してみ、と私の頭をポンポンと撫でてきた。
「・・・・・・そんなこと気にしてたのか」
正直に話し終えた私に対し、彼は呆れたように息を吐いた。
「そんなことって・・・私は、」
「逆効果」
「・・・え?」
「お前は気を遣って俺を避けてたかもしれないけど、俺は正直・・・不満だった。悠輔とは連絡とって、今日会ってたらしいじゃん」
「・・・だって功平くん、きっとバイトで大変なんだろうなって思っちゃって・・・」
「うん。でも俺は、連絡とったり、会って顔見た方が断然いい」
「そう、なの?邪魔にならない・・・?」
「ならない。何・・・俺のこと心配してくれてるんだ?」
前にも聞いた台詞。意地悪そうに見えて、どこか穏やかな笑顔に見えるのは気のせい?前は電話だったから顔が見えなかったけど、もしかしてあの時もこんな風に笑ってたのかな。
「・・・してるよ」
「え?」
「・・・心配、してる」
面と向かって言うのは予想以上に恥ずかしくて、私の心臓は未だ嘗てないくらい位騒ぐ。耳元で鳴っている様な感覚に陥る程の鼓動を感じながら、俯いていた顔をゆっくり上げた。
「、ばっ・・・か!こっち見んな!」
すると、目の前には片手で口元を覆い、頬を赤く染めた功平の顔。彼は、同じく赤面しているだろう私から目を逸らしてそっぽを向いた。
ドキドキドキドキ・・・
駆け抜けるような速さで動く鼓動が身体中に響く。あまりに強く早く鳴る心臓が痛くて、益々顔が熱くなるのが分かる。身体も動かず、戸惑う思考だけが慌ただしくグルグル回る。