第7章 すれ違う気持ち
「来年の夏公開の映画、観に行こうよ」
「え、行く行く!行きたい!」
「よっしゃ、決まり!」
来年の約束まで交わしてしまう程の意気投合。周りに同じ趣味の人がいなかったので、私にとってもかなり嬉しいことなのだ。
「そうだ、夕飯食ってく?」
「んー・・・そろそろ帰ろうかなって思ってて」
「そっか、次は食べてって。じゃあ、駅まで送るよ」
「え、大丈夫だよ!」
「いいから。それに、駅まで色々話したいし(笑)」
「うーん・・・じゃあ、お願いしようかな?笑」
「ん!」
喋りながら支度をしていたせいで、家を出るまでに少し時間がかかってしまった。
「「寒〜っ!」」
外に出た瞬間に同じタイミングでハモる言葉に、2人して笑った。道中会話は途絶えることなく、駅に着いてからも暫く立ち話をしてから別れた。悠輔の後ろ姿が見えなくなってから改札に向かい、ICカードをかざそうとしたその時
グイッ
「、っ!?」
後ろから右腕を途端に引っ張られ、バランスを崩した私の視界は一気にグラリと歪む。驚きと突然の歪む視界が気持ち悪くて目を瞑ると、私の身体はゆっくり後ろに倒れた。
「、ぶねー・・・」
頭の上から聞こえる声と、背中に伝わる少し硬くて温かい温度。声で誰かはすぐに判明したが、驚くよりも今は衝撃による気持ち悪さとそうなった原因への苛立ちが勝る。
「・・・大丈夫、か?」
「・・・大丈夫、じゃない・・・」
しゃがみ込む私につられて、彼も私を支えるように一緒にしゃがむ。私の顔色を確認した彼は焦ったように私の背中を摩り、ごめんと小さく呟いた。彼に凭れかかるようにしてベンチへ移動し、持っていた水を口に含む。
「・・・ごめん、」
そうして再度謝る彼を弱い眼力で睨めば、彼は本当に申し訳なさそうに項垂れた。そんな顔をされたら、何だかこっちが悪いことしてるみたいになる。
「・・・ん、大丈夫だから」
何度も謝る彼が少し可哀想で、結局許してしまう。でも、心配そうに私の顔を覗き込む彼と目を合わす気になれず、少し下の方に視線を向ける。と、
(・・・・・・汗?)
視線の先の首筋に汗が滲んでいることに気づいた。そんな私の視線に気づいた彼は苦笑いを浮かべる。