第6章 縮む距離感
「それでねー、なおとくんがねー、」
帰り道、保育園での出来事を聞かせてくれる陽太と手を繋ぐ私。と、寝ている竜を抱っこする功平。
「・・・今日は一段とよく喋るな」
「そうなの?」
「ねーとも!きいてよー!」
「ご、ごめんごめん!ちゃんと聞いてるよ」
功平曰く、どうやら陽太は私の前では饒舌になるらしい。話の合間に欠伸をする陽太は、目に涙を溜めながらも楽しそうに話していた。
笹倉家に帰宅して暫くすると、すっかり疲れてしまった陽太は、既に夢の中である竜に寄り添うようにして眠りについた。功平は慣れた手つきで布団を敷き、陽太達をきちんと寝かせる。
「・・・お前まで眠そうだな」
「うん、ちょっとね(笑)」
私も一緒に陽太と竜の部屋にお邪魔しており、どうやら2人の可愛い寝顔を見て眠気が移ったみたい。
「寝てていいよ」
「え、」
「夕飯出来たら起こしに来るから」
まさかそんな返事が返ってくるとは思わず戸惑っていると、陽太の隣に寝転んでいた私にも掛け布団が掛けられた。フワッと香る太陽の匂いに、益々眠気が押し寄せる。
「面接で気疲れもしただろうし」
「・・・でも、」
「瞼くっつきそうじゃん(笑)。我慢しないで寝とけ」
躊躇って少し上げていた頭は、功平の手によって枕に納まる。おでこに軽く触れた彼の手はあたたかく、私はゆっくり意識を落としていった。
「・・・、んん・・・」
あれからどれくらい経ったのか、目が覚めると窓の外はもう暗かった。隣に視線を落とすと、薄暗い中でボンヤリ見える陽太と竜。微かに聞こえる2つの寝息に気をつけて、私はそっと部屋を出た。
勝手に洗面所を借りて、寝起きの腫れぼったい顔を水で軽く洗って髪の毛も手櫛で整えた。そーっとリビングを覗くと、ソファには功平といつの間にか帰って来ていた悠輔がいた。
「あ、おはよ。もう起きたんだ」
「お、おはよ・・・ございます・・・」
後ろにいたはずなのに何故か気付かれ、私はおずおずと中に入る。
「もうすぐご飯炊けるから。座って待ってて」
「あ・・・う、うん。・・・ありがと」
「ふっ・・・まだ眠そう」
台所に向かう功平と入れ替わるようにソファに座る際、すれ違い様に功平がそう笑った。