第6章 縮む距離感
「・・・お邪魔しまーす」
そして結局笹倉家にお邪魔する始末。どうやら家の中には誰もいないみたい。陽太と竜は・・・どこ?初めてでもないのにキョロキョロと部屋を見渡していると、
「ごめん、すぐ戻ってくるから中入って待ってて」
と、鞄を下ろして再度ドアを開けようとする功平。
「え、どこ行くの?」
「迎え」
「・・・迎え?」
「保育園」
その言葉にようやくピンと来た。
「じゃあ行ってく・・・」
「私も行きたい!」
「・・・は?ただ迎えに行くだけ・・・」
「うん、行きたい!」
せっかくだし!とお願いしてみる。
「・・・行くぞ」
不思議そうに顔を歪めながらも、結局私も一緒に連れて行ってくれるらしい。歩いて10分するかしないかの所にそれはあった。
(へぇ〜・・・ここが保育園かぁ・・・)
幼稚園出身の私がこうして保育園をちゃんと見るのは初めて。興味津々にキョロキョロしている私を、功平は呆れ顔で腕を引いて中に誘導する。そして下駄箱に着くと
「笹倉さん、こんにちは」
私達に気づいた保母さんが素早く駆け寄ってくる。恐らく親世代だと思われる、とても優しそうな女性。
「あ、こんにちは。お世話になってます」
「ふふ、今日も2人共いい子にしてたわよ。・・・あら、彼女さんかしら?」
「えっ・・・い、いや・・・」
「美人さんね〜、スラッとしててモデルさんみたい。ちょっと待ってて、陽くんと竜くん連れて来るわね」
とんでもない発言をポンポンと言い放ち、私の反応そっちのけで教室に入っていく先生。クスクスと隣で笑う功平を睨んでいると、先生は陽太と竜を連れてすぐに戻ってきた。
「あー!ともー!!」
「、わっ・・・お、おかえり、陽太」
子どもとは言え男の子。物凄い勢いで飛びついて来る陽太に私は思わずよろける。転ばずに済んだのは、今のことを陽太に注意している、功平が支えてくれたから。
「あら、あなたがともちゃん?」
何で私のこと・・・と思いつつ、はいと返事を返すと、陽太からよく話を聞くのだと先生は穏やかに笑った。聞いていた陽太が改めて私と先生を紹介してくれて、先生の優しい雰囲気も手伝って少し和んだ。