第6章 縮む距離感
「・・・そ、そうだよ!功平くん、まだ鼻声だし、声も少し掠れてるし・・・無理しちゃ・・・」
『あー違う違う、俺じゃなくてお前のこと』
「・・・私?」
『そう。無理はさせたくねーし、別に明日じゃなくても・・・』
「、大丈夫!私は全然、大丈夫!」
功平が言い終わる前に、少し食い気味に言ってしまった。完全に・・・無意識だった。まさか自分のことを考えてのことだったなんて・・・と、少々驚いた。
「・・・だから・・・明日、正門で、ね・・・?」
無理矢理だったかな・・・。でも、嬉しかった誘いが、自分のせいでなくなってしまうのは嫌だった。こんな風に彼に少し強気で言うのは、多分初めてかもしれない。
『・・・ん、分かった(笑)。でも、無理すんなよ?』
「う、うん、大丈夫!・・・功平くんも無理、しないでね?」
『分かってるよ。俺のことは心配はいらないよ』
それは私の台詞と言いたい所だが、ここは黙っておくことにした。
「うん、分かった!・・・じゃあ、また明日・・・」
『・・・、もう切るの?』
え・・・今のいい区切りじゃなかった?まさかそんな返答が返ってくるとは思わず、固まってしまう。
『・・・あ、ごめん。やっぱ・・・』
「あ・・・だ、大丈夫!切らないから・・・」
『・・・いや、いい。変なこと言ってごめん、明日な』
「え、ちょっ・・・功平く、・・・・・・・・・切れちゃった」
切るのを阻止したかと思えば、今度は口早に言うだけ言うと一方的に切られた。
(・・・どうしたんだろ?)
何だかいつもの功平とは違った気がした。決して見下している訳ではないと思うが、いつもはもっと落ち着いて私を面白そうに含んで笑っている印象。それが、今日は何だか・・・
「・・・あ、」
そんなことを考えている私の元に、再度彼からメッセージが届いた。
[明日の放課後正門で。体調悪かったりしたら無理せず言うこと]
・・・何という事務的な文章。一応ツッコむことなく素直に返事を返した。
暫くして、ドキドキと小さいけど速く動き始める鼓動。緊張から解放されたから、かな。
(電話、嬉しかったな・・・)
今となれば、もう少し電話していても・・・。早く明日にならないかな、なんて思ったのは、私だけの秘密。