第6章 縮む距離感
時間を確認しようと、無残にもベッドから落ちてしまっていた携帯を拾い上げて画面を見る。
「・・・あ、」
もう22時が近いことを確認したと同時に、
「・・・返事、来てる」
画面にいくつか表示されている通知の中に、“功平”の文字を見つけた。まさか今日の内に返事が返ってくるとは思っていなかったので、驚いて目はパッチリ覚め、慌てるように彼からのメッセージを表示させた。
[返事遅くなってごめん。具合どう?]
1時間程前に届いていたメッセージに、半ば慌てるように返事を返す。
[ごめんね、寝ちゃってた!私は大丈夫だよ、もう治ったみたい!功平くんは具合どう?]
起きてみたら、気怠さもくしゃみも治まっていて、調子も戻っていた。返信遅れちゃったし、きっと私のメッセージに気づくには時間がかかるだろう・・・と携帯を置いて伸びをしていると、
[おはよ。本当?無理してない?俺も大丈夫]
すぐに返ってきた。
[おはよう(笑)うん、無理してないよ!功平くんこそ無理してない?]
[なら良かった。全然してない]
お互いに元々少し気遣う性格なのを知っている為、信じていない訳ではなく念の為に確認し合う。そしてそんな彼から、付け足されるようにして届いたもう一言。
[電話してもいい?]
え・・・と思わず固まってしまった。断る理由もないけど、電話なんて初めてだし、恥ずかしい。悩んだ末に、うん。と一言送ると、待っていたのかすぐに電話が掛かってきた。
「・・・もしもし、?」
『ん、もしもし』
ドッキーン!と心臓が大きく高鳴った。電話で聞く彼の声は、普段より少し低く聞こえる。
『いきなりごめん』
「う、ううん・・・大丈・・・夫」
『はは、緊張してるね』
「・・・ちょっとだけ、ね」
『大丈夫。ちょっとずつ慣れてくれればいいからさ。相手は俺なんだし、そんな緊張すんなよ』
「うん、」
こうして改まると、やっぱりどうしても緊張してしまう。そんな私を、功平はちゃんと気づいてくれたみたい。
「・・・辛そう、だね?」
『俺?あー、ちょっとまだ鼻声だけど、別に大したことないよ』
「・・・そう?」
『うん。・・・何、心配してくれてんの?』
おどける功平。悔しいけど、心配してる。鼻声だけでなく、いつもより低く感じさせる少しだけ掠れた声。