第5章 触れる温かい輪
それが今
「お兄ちゃんかぁ・・・うわー、スゲェ嬉しい」
ちょっぴり、叶った気がした。
「・・・兄貴、顔ヤバい」
「キモ」
「きもー!」
「ふん、何とでも言え」
あくまでお兄ちゃん的な存在。でも、そう思える様な人が出来たってことだけでも十分嬉しかった。
赤ちゃんの竜を除いた兄弟4人の会話は仲の良さを物語っており、私にとっても居心地がいい。
「今日は俺が送るよ」
食後でお腹がいっぱいになり、遊んでいる最中に寝てしまった陽太。居心地の良さに時間を忘れ、いつの間にか19時を過ぎてしまっていた。そろそろ帰ると申し出たところ、返事を返してきたのは功平・・・・・・ではなく、秀だった。
多分彼も送ってくれるつもりでいたのだろう、功平は立ち上がろうとした姿勢のままこちらを見ている。
「え・・・で、でも・・・」
「こんな暗い中1人で帰せない。ちゃんと家まで送るよ」
ね?と同意を求める秀に、私は戸惑いながら、ゆっくり頷いた。私のことを心配してくれていることが伝わってきて、せっかくだし・・・と有難くお言葉に甘えることにした。
笹倉家に残る皆と別れ、秀の車に乗る。他人の車に乗るのは初めてで変に緊張するが、それもすぐに気にならなくなった。
「遅くまでごめんね。お家の人は大丈夫?」
「あ、はい、大丈夫です。ちゃんと連絡したので」
「それなら良かった」
親が心配しているのでは・・・と、その辺にまで気にかけてくれる様は、やはりお兄ちゃんだと実感した瞬間だった。そして無事、自宅まで送って貰った。
「またいつでも来て。ともなら大歓迎だからさ」
別れ際の会話。妹だから、と私の呼び方を変えた秀は、私の頭を少し強めに撫でて帰って行った。今まで家族や身内、部活の先輩以外で自分より年上の人・・・ましてや異性の人とここまで親しくなったことがなかった私にとって、秀は“大人”を感じさせる大きな存在となった。免疫がないからだろうか・・・
「う、わぁ・・・」
こんなにドキドキするのは。
秀の車が見えなくなった途端、両頬を押さえる。熱いし、やっぱりドキドキする。
冬が近い、少し寒い夜。