第5章 触れる温かい輪
そして結局、私は成り行きでここに来た訳なのである。
断ろうと思えば断れたのに、そうしなかったのは・・・どうしてかな。
「ともつれてきたー!」
そう言って私の手を引いてくれる笑顔の陽太を、よくやったと褒める秀と悠輔。それを笑顔で見ている功平。家族だなぁ・・・と、ぼんやり思った。
「よく来てくれたね」
穏やかに笑う秀。私の為に料理まで振舞ってくれる彼は、本当に自分の兄の様。そんな錯覚に陥る程、彼は優しい。
「私の為にわざわざ・・・本当にありがとうございます!」
「俺がしたかっただけだからいいの。それに、そのお陰でこうして話せるようになれたしね」
実はそれが目的でもあったのだとカミングアウトし、初めて悪戯に笑った。みんなで食事をして色々話す毎に、私の人見知りも自然と落ち着いていった。
「秀さんのお陰です」
「・・・秀にぃだけ?」
「お?悠、ヤキモチ?」
「ち、違えよ!」
秀と悠輔の兄弟らしいやり取り。私と衣奈を重ね合わせてしまい、つい笑ってしまった。それを見ていた功平が、変な奴・・・と言わんばかりの目をこちらに向けている。
「ち、違うの!私も普段、妹とこんな感じなのかなーって思ったらおかしくなっちゃったの!それだけ!」
「別に俺、なーんも言ってないけど?」
「目が言ってるもん!目が!」
必死に訴えるも、それを華麗にかわす功平。悔しい・・・。
「へぇ、ともみちゃん妹いるんだ」
「はい。3歳年下なので、悠輔くんと同い年です」
声は出さないが、微かに反応を示した悠輔。
「2人姉妹?」
「はい」
「じゃあ、ともみちゃんがお姉ちゃんか」
「・・・見えないですか?」
「そんなことないよ。しっかりしてるし、お姉ちゃんっぽいなーとは思ってたんだけどね。俺にとっては妹みたいな感じだからさ」
妹欲しかったんだよね。と、私の頭を優しくポンポンと撫でる秀。恥ずかしさと嬉しさが入り混じる感情の中、やっぱり勝るのは喜びの方。
「私も・・・お兄ちゃん欲しかったので、嬉しいです、」
長女である私にとって、お兄ちゃんという存在はとにかく大きな憧れ。もし将来結婚出来たとして、旦那さんにお兄さんがいない限り、絶対叶うはずのない夢。