第5章 触れる温かい輪
そして今、
「ただいまー」
何故か私は
「ごめん、相変わらず散らかってて」
「う、ううん・・・お構いなく」
笹倉家に来ている。
あの後、部活の発表時間が迫っていることに気づいた私は体育館に急がなければならず、それを笹倉兄弟に伝えたところ・・・何故かついて来て発表を終始見届けてくれて。
文化祭を終えてHRの為教室に戻ると、予想通りの展開が待ち受けていた。クラスの女子から質問殺到。それを麻乃が聞きつけ、クラスの女子以上の凄まじい質問攻め・・・。返答の限界に達した私は、HRの終了後、逃げるように教室から出た。
そして何故、私が今ここにいるのかというと・・・
「打ち上げ延期?」
「うん、今日は後夜祭があるから別の日に変更だって」
部活の発表後、見に来てくれていたクラスの女子が教えてくれて、近くにいた彼らもそれを聞いていた。これがそもそものキッカケとなる。
「じゃあ、この後お前どうすんの?」
「この後・・・?帰る、けど」
特に用事もなくなったし、と功平の質問に答える。受付や部活の発表で少し疲れたし、今回の後夜祭は興味がないので行く気もない。その後は特に何かを聞かれることもなく、笹倉兄弟と分かれた。
・・・はずが
「お、案外早かったね」
「・・・なっ、何でいるの!?」
「とも〜!」
そのまま打ち上げに行くという麻乃と別れ、1人なら歩いて帰ろうと思い校門を抜けた時のことだった。何も聞かされていない私は、功平と陽太がいることに当然驚く。
「この後予定ないって言ってたよね」
「・・・うん?」
「オッケー、決まり!」
一体何がオッケーで決まりなのか。全くもって意味が分からないが、そんな私の手をグイグイ引っ張る陽太。
「うちあげだよ!」
「・・・え?」
「うちあげ!」
うちあげ?何のこっちゃ・・・。そう思っていると、向かいに立つ彼から笑い声が漏れた。久しぶりに見る、あの含んだ笑い。
「兄貴が提案者だよ」
「兄貴・・・?秀さん?」
「うん。お礼とお詫びにって」
・・・何の?
そんな疑問が顔に出ていたらしく
「まぁ、いいから(笑)。早めに帰すから、とりあえず寄ってって」
そう言って功平に腕を引っ張られ、先程まで動じなかった私の脚が動いた。