第5章 触れる温かい輪
私の顔を見上げて手を伸ばし、何かを言おうとする竜。ん?と顔を傾けると、彼は声をあげて笑った。
「ともみちゃん、気に入られたね」
「え、本当ですか・・・?」
「うん、結構分かれるんだよね。泣く人には泣くから」
それを聞いて余計嬉しくなり、思わず笑みが浮かぶ。そんな私を見て、竜もまた笑った。
「お、竜笑ってる」
「本当だ!ともに抱っこして貰えて良かったな、お前」
「えー!おれも!おれもだっこ!」
たこ焼きを片手に戻ってきた功平と悠輔の言葉に、反応した陽太が対抗するように私に手を伸ばす。それを兄3人が宥め、結局秀が抱っこして何とか落ち着いた。
「ともも食べよ」
買ったばかりのたこ焼きを私に差し出したのは悠輔。功平は、秀に抱っこされている陽太に食べさせている。
「あ、でも竜のこと抱っこしてるから、手使えないか」
「私は大丈夫!みんなで食べ・・・」
「じゃあ、はい」
「・・・・・・・・・なに?」
「口、開けて」
・・・・・・はい?言われるまでもなく開いた口が塞がらなくなった私。それに気づいた悠輔が、たこ焼きを口元に持ってくる。要するに、あーん、だ。
そんな恥ずかしいこと出来るかー!!
「え、ちょ、ちょっと待っ・・・」
待っての“ま”の瞬間、大きく口が開いたのをいいことに、有無も言わさず口の中に入れられた。それも、私のクラスの屋台で買ったたこ焼きを、その真ん前で。
(・・・な、何てことしてくれたんだー!!)
内なる叫びは、この口内いっぱいのたこ焼きのせいでもちろん言葉にはならない。そんな私の心情なんて知る訳もない悠輔は、美味しい?なんて呑気に聞いてくる。文句を言おうにも言えないし、別に味には問題ない為、どうすることも出来ず頷いた。
食べ終えてから、もちろん悠輔に文句を言って。何故か功平はクラスメイトの男子に写真を撮って欲しいとお願いしていて、その男子は戸惑いながらも、功平の携帯で私達を撮ってくれた。
笹倉兄弟と私。知り合って間もない、友達なのか何なのかも分からない私達。それでも、こうしてみんなで写真を撮って貰えたことは、思った以上に嬉しかった。
これが初めて、みんなで撮った写真。