第2章 冷え始める季節
「じゃあ俺、何か買ってきます」
そう言ったお兄さんは、本当は長居するつもりはなかったみたいだけど、陽太がまだ私と遊びたいと言ってくれたことで、お昼をここで一緒に食べることになった。
「あ、私も一緒に・・・」
「大丈夫ですよ、ちゃんと3人分適当に買ってくるんで」
「でも・・・」
見ず知らず・・・という訳ではないにしろ、まだまだ全然どんな人なのかも分からない人に買いに行かせるなんて、そんな失礼なこと出来ない。でも、どうしたって断られて、陽太とここで待つように言われてしまう。そんなの悪い、そんな訳にはいかない、と言っても聞く耳すら持ってもらえない。どうやら彼は頑固らしい。・・・私も人のこと言えないけど。
「陽、手」
「ん!」
結局3人でコンビニに行くことになった。そして横断歩道の赤信号を待っている時に聞こえた2人のやり取り。きっと、危ないからという意味だろう。いつものやり取りというように自然で、何だか感心してしまった。すると、陽太が私を見上げて手を差し出した。
「とも、て!」
「え?」
「て!」
お兄さんと全く同じ口調で、私に手を握ることを要求してくる陽太。まさか自分にまで要求されるとは思わなかったから少し躊躇ったけど、素直に手を差し出せば彼は笑って私の手を掴んだ。
「あー!とものて、つめたーい!」
「ご、ごめんね、冷え性なんだ!」
「ひえしょー?ひえしょーってなに?」
「え!?んー、えーっと・・・冷え性っていうのは・・・」
そんな冷たい私の指先を、陽太は嫌がることなく握り続けてくれた。冷えちゃうから、と手を離そうとしても、危ないからダメ!と一層握る手に力を込められた。