第2章 冷え始める季節
なんて、少し悔しく思っていたのだけど・・・
「ちょっと早めに来たつもりだったんですけど、もしお待たせしてたらすみません」
「あ、いえ、私もさっき来たばかりなので・・・」
「なら良かった、待たせてたらどうしようかと」
こんな風に律儀に気遣いを見せるのも先日同様。ここまでキチンとしてる高校生、他にいるのだろうか。
(・・・あれ、本当に高校生・・・?いやでも制服着てるし、そうだよね?)
と頭を悩ませていると、不意に私の脚が突かれた。
「ねぇ、はやくあそぼうよー」
それはもちろん陽太で。陽太に目線を向けるとニコニコと笑顔を浮かべていて、楽しみにしてくれていた気持ちが伝わり、私まで嬉しくなる。
「そうだね。よーし、遊ぼ遊ぼ!」
「うん!こーにぃもはやくー!」
「はいはい」
陽太の小さい手が私の手を取り、そしてお兄さんの手を取った。それがあまりにも自然で。そんな私も、陽太の小さな手をギュッと握りしめていた。
「とも〜、いくよ〜!」
「いいよー!」
陽太が私に手を振って合図し、私もそれに応えて彼のパスを受ける。
「へー、思ったより上手い」
陽太が持ってきていたサッカーボールを3人で囲ってパスをしていると、ボソッとお兄さんが呟いたのが聞こえた。それが私のことだっていうのはすぐに気づいて
「今体育でサッカーやってて、」
「へぇ。さすがサッカーに強い学校だけありますね」
「そんな本格的じゃないですよ!3年間選択で取ってただけで」
「3年間?」
「はい」
何かに取り組みながらだと、不思議と私も自然に話すことが出来た。多分目を合わせないからだと思うんだけど・・・。
そんなやっとの思いで受け答えをしている私を知ってか知らずか、彼はおなじみの含み笑いを浮かべている。それに気付いたのは、陽太からのパスを彼に回した時だった。
「・・・何ですか」
あー、流しておけばよかった。と、彼の顔を見てすぐに思った。私のパスを受けて陽太に繋ぐと、案の定彼はお得意の笑みで、別に、と答えた。
「こーにぃー!おなかへったー!」
グッドタイミングなのかバッドタイミングなのか、陽太は自分の元に来たボールを抱えて私達の方へ駆け寄ってきた。時刻は14時ちょっと前。お昼時だからなのか、さっきより少し人が減っているように思えた。