第2章 新しい空気
空気が変わったこの世界では、別に一人の部屋に帰ることも寂しいことではなかった。
だけど毎週土曜の夜は教会に寄った。
神様にお礼を言わないといけないし……。
というのはただの口実みたいなもので、またここでミシェルに会えるかもしれない。
イスに座り、物思いにふけっていると声をかけられた。
「何してるの?」
聞き覚えのある声に振り返るとミシェルが立っていた。
「え? あっ! いや別に……。あ、あのっ、ひさしぶりですね」
「ひさしぶり? そうかな?」
3日顔を見てないだけだ。私は恥ずかしくなった。ミシェルは腰掛けながら言った。
「君、前もここにいたね」
覚えててくれたんだ!
「はい。土曜の夜はなんとなく……まっすぐ帰りたくなくて。ここ落ち着くし」
「そう。神様……信じているの?」
「はい」
ミシェルと出会ってから信じ始めたのだ。調子よすぎだろう。
神様の前でまたちょっと自分が恥ずかしくなってうつむいた。
「僕も信じているよ。神様」
そう言ってミシェルはとても優しく微笑んだ。
やっぱり天使だ! 絶対!
「あ、そうだ」
ふと思い出した。
「お店で今日あまったケーキだけど……。よかったら持って帰ってください。りんごタルトも入ってます」
私はケーキの箱を差し出した。彼は少し考えるような表情をして言った。
「いま紅茶を切らしていて」
「じゃあうちでどうですか?」
言ってから気づいた。なんてことを言ったんだろう、恥ずかしすぎる……。
「いいの?」
と彼はうれしそうに言った。
え? いいの? こんなことあって。
神様ってすごい。