第13章 記憶の扉(後編)
「へぇ……」
マリィは僕の話を聞いて、そう感想を述べた。
そして自分の左手の指輪をじっと見た。
「ミシェルが何も忘れないなら……、わたしはずっとここにいられるね」
そう言って彼女は微笑んだ。僕も微笑んでうなずいた。
「たましいは何に使うの?」
「たましいなんてないよ」
「えぇ? そういう約束するんじゃないの?」
「あれは単なる意思確認だ」
「へぇ……。あ、じゃあどうしてわたしのたましいいらないって言ったの?」
マリィは少しすねたように僕に言った。
「そんなことよく覚えているな……」
「ミシェルだって覚えているんでしょ?」
「それは、まあ……。僕にはマリィの願いごとをかなえる自信がなかったからだ」
「わたしの願いごと……」
そう言って彼女はそっと目を伏せた。そして顔を上げてにっこりと笑った。
「わたしの願いごと、かなったよ」