第12章 記憶の扉(前編)
「あっ、あん、やっ、だめっ、いっちゃう……」
「うん……」
マリィは僕の腕をぎゅっと握り、身体を震わせた。
僕は彼女の耳元でささやく。
「きもちよかった?」
「はぁっ、はぁっ……。うん……、きもちよかった……」
「もっときもちよくしてあげる……」
「えっ? やっ、あん……」
僕は彼女の中でまたゆっくりと動かす。彼女の中はぎゅうっとしまっている。
「あっ……。やん……。うそ……、すごい……。やだぁ……」
彼女はまた少し泣き出しそうになる。
僕は彼女の肩をぎゅっと抱き耳元で言う。
「だいじょうぶだから。ね、感じて」
「あ……、あ……。いっちゃう。またいっちゃうぅ……」
「うん……」
僕はマリィに頬ずりした。
僕の腕の中にいるマリィがかわいくてしょうがなかった。
唇にキスしながらまた少し動かした。
「あ……、だめ。もうだめ。ほんとにだめ……」
「もうちょっとだけ……」
「だめ……。やだ……。もうやだぁ……」
マリィは子どもみたいに泣き出してしまった。
僕はあわてて彼女の髪をなでた。
「ごめん。ごめんね……。やりすぎちゃった」
「うん……。ほんとに死んじゃうかと思ったぁ……」
マリィはちょっと恥ずかしそうに笑いながら言った。
僕は……。
僕の目から涙がこぼれて彼女の顔に落ちた。
「えっ? ミシェル? なに? どうしたの?」
マリィがびっくりした声で言う。僕の目からは涙があふれ続ける。
「……殺したんだ」
「へ?」
「僕が……マリィを殺したんだ……」
「……え?」
「マリィが……僕を忘れて……、他のやつとこれをするのに耐えられなくて……、殺したんだ……」