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冬の夕空

第2章 新しい空気


ミシェルは毎日のように、午後お茶を飲みに来た。レオンと待ち合わせしていることが多かったが、一人で来て一人で帰ることもある。
私はもうよけいなことは話さないようにした。彼もいつも静かに本を読んだり、ただぼんやり窓の外を眺めていたりした。

お茶を出すとき彼の横顔をそっと間近で盗み見る。

伏目がちな瞳に長いまつ毛。
形のよいあごにサラサラとかかる金色の髪。
本をめくる長く美しい指先……。

店に若くてハンサムな客が来ることもたまにはあるが、こんなに透明感のある美しい男性を私は見たことがない。
天使なのかもしれない。教会から出てきたんだもん。
思わずうっとりする。
すると彼が私のほうを見た。
私があわてて笑顔をつくり、ごまかしながら立ち去ろうとすると彼は言った。

「紅茶、いつも君が淹れてくれているの?」

「はい」

「君の淹れる紅茶は美味しい」

そう言って少しだけ微笑み、彼はまた本のページに目を落とした。

ものすごく、ものすごくうれしかった。


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