第2章 新しい空気
神様は優しかった。
翌日午後、ミシェルは店に来た。
「お茶を」
「こんにちは。こちらへどうぞ」
テーブルに案内する。
「りんごのタルト美味しかった」
「あ、ありがとうございますっ」
うれしい!
お茶を運ぶとき私は話しかけてみた。
「あの、今日はお一人ですか?」
「待ち合わせ」
誰と? もしかして同伴?
「レオンと」
「そうなんですか」
思わず少し笑顔になる。
「あ」
その顔を見て彼がつぶやいた。
「君……、レオン……。やめておいたほうがいい。君のような年端のいかない子がああいうのに惹かれてしまう気持ちはわかるけど……。相手が悪すぎる」
「え? あ、いや。ちがうんです。全然、ぜんぜんちがいますからっ」
あわてて否定したのが変に不自然になってしまったかもしれない。
「本当に?」
「本当です」
少し疑わしい目をしたまま彼は言った。
「まあ、僕には関係のない話だけれどね」
よけいな話をしてしまった……。
レオンはまた昨日のような調子でやって来た。お茶していきたいけどこれから仕事があるからまた今度、と言って笑顔で手を振った。景気がよさそうだ。ミシェルのほうはチラッともこっちを向いてくれなかった。