第12章 記憶の扉(前編)
だけど僕は何も言えず自分の部屋に戻った。
そして酒と薬を飲んで眠り、いつもの扉を開けた。
僕はベッドの横に座り、マリィの寝顔をしばらく眺めた。
そしてそこで眠ろうとしたがなかなか眠れなかった。
睡眠薬を持ってくればよかった。
ふとテーブルの上に置いてある風邪薬が目に入った。これを少し借りてみよう。
僕は風邪薬を飲み再びベッドの横に座り、マリィの寝顔を眺めた。
だんだんと気持ちよくなってきた。
少し眠れそうだ。僕は目を閉じた。
「ミシェル! ミシェル……」
声が聞こえて目を覚ますと、ベッドの上でマリィが泣いていた。
僕はマリィの顔をぼんやりと見上げた。
これが夢というものなのだろうか……。
僕が目を覚ましたのに気づくと、マリィは泣きながら話し出した。
「ごめんね……、ミシェル。わたし……」
僕は立ち上がった。足元が少しふらついた。
そしてマリィを抱きしめた。
「ちがうんだ……。悪いのは僕のほうだ……」
「ミシェル……」
マリィは身体を震わせて泣いた。
僕も胸の奥が痛くなった。彼女の身体はとてもあたたかかった。
夢というのはこんなにもリアルなものなのか……。
しばらく泣いて彼女は少し落ち着いてきたようだった。
僕は彼女の髪をなでた。僕の顔を見上げて彼女は言った。
「お酒のにおいがする……。ミシェル、お酒飲むの?」
「最近、飲むようになった」
「知らなかった」
そう言って彼女は少し笑った。僕も少し笑った。
僕は彼女のことをとてもかわいいと思った。
「マリィ、好きだよ」
僕がそう言うと、彼女は笑った。
「酔っ払ってるの?」
「酔っ払ってるけど本当なんだ」
僕がそう答えると、彼女は少し恥ずかしそうにうつむいた。そして僕の顔を見て言った。
「わたしも好き。ミシェルのことが好き」
僕は再び彼女を抱きしめた。そして僕たちはキスをした。