第12章 記憶の扉(前編)
だんだん酒を飲んでも眠れなくなってきたので、薬屋に睡眠薬を買いにいった。
部屋に帰ってくるとリビングにレオンがいた。
「ひさしぶり」
レオンにそう声をかけられる。僕は答える。
「そうだっけ?」
「そうだよ。おまえずっと部屋から出てこないじゃないか」
「なんか仕事するのが面倒で」
「べつに仕事なんかしなくていいけどさぁ……、外に出ろよ。毎日、部屋から出ないで酒飲んでるのはやばいだろ」
だんだん話すのも面倒になってきた。
「酒ぐらいレオンだって飲むだろ」
「飲むけどさぁ……。そうだ、いっしょに飲もう。適当に女の子をひっかけてやるから今夜は楽しくやろう」
そう言ってレオンは楽しそうに僕の腕を引っ張った。僕はその腕を振り払って言った。
「ほっといてくれよ! レオンみたいに誰でもいいってわけじゃないんだ!」
レオンは僕の顔をじっと見た。そして言った。
「わるかった」
ちがう。悪いのは僕のほうだ。