第2章 新しい空気
ケーキを詰め終わると愛想のいい男性がお金を払った。
「領収書書いてね。あて名はこの名前で。この名刺はキミにあげる。用があったら電話して」
名刺には名前と電話番号。そして金貸し業と書いてあった。花街には金貸し屋はたくさんいるけど初めて見る名前だ。
「こんな子どもに金貸しても返せないだろ、レオン」
ミシェルが言った。
「もちろんそんな用事じゃなくて! 食事とかデートとか。ね、マリィちゃん」
レオンは私を見てにっこりと感じよく微笑んだ。私なんかとデートしなくてもたいへんにもてそうなタイプだ。
「なるほど」
あきれたようにそう言って、ミシェルはコートのポケットに手を突っ込んだ。
「じゃあね! また来るね!」
そう言ってレオンは手を振りながら帰っていった。ミシェルは一瞬私のほうをチラッと見ただけだった。
また……、また会いたいなんて思っていいのかな……。
私は心の中で神様にお祈りした。