第9章 殺して
翌朝、店に着き私は呆然と立ち尽くした。
シャッターに「閉店のお知らせ」という紙が張られていた。
店が……、つぶれるだろうとは思っていたけど……。
何も知らされてなかった。もしかして昨日? 私が熱出して寝込んでるときに? 今月の給料は? それよりも初めて働いた店なのに挨拶もできないで、こんな……。
私は裏口にまわってみた。もしかしたら中に誰かいるかもしれない。
裏口の扉は開いた。
中には誰かがいた。
知らない誰かが。
……泥棒? 気づかれないうちに逃げないと。
そっと後ずさりしようとすると、後ろから誰かに羽交い絞めにされた。
「みつけたよ。カネメのもの」
後ろから男の声がする。事務所の中の知らない男が私の顔を見る。中年の男だ。
「お嬢ちゃん、ケーキ買いに来たの?」
私は後ろの男に口を手で押さえられていた。首を横に振る。中年の男が近くに寄ってきて言う。
「この店の関係者?」
私が返事できずにいると、その男がひざで私のお腹を蹴った。痛さで息が止まる。
「聞いてるんだけど」
「かわいそうじゃね? 俺が押さえてるから答えられないんでしょ?」
後ろの男が口を押さえている手を放す。