第6章 たましいあげる
土曜日、ミシェルはちゃんと玄関から来た。
花を持って。
「お花……?」
彼はにっこりと微笑んで私にその花束を差し出した。
「プレゼント」
「……ありがとう」
びっくりしすぎてリアクションを間違えた気がする。
店の隣の花屋さんからときどきお花をもらうので、いちおう花瓶は持っていた。よかった……。
テーブルに飾って眺めてみる。ピンクのバラと白いカスミソウの可愛らしい花束。
「かわいい……」
思わず笑顔になる、というかにやけてしまう。
「うれしい?」
「すごくうれしいです」
「よかった」
そう言って彼もにっこりと微笑む。
「あ、お茶を淹れますね」
そう言って私が立ち上がると彼は私の手首をつかんだ。そして私をぎゅっと抱きしめた。
「マリィ」
「……はい」
「僕のことが好き?」
知っているくせに。
「……好き」
私がそう答えると、彼は片手で私の髪をなで、顔を上げさせた。
少しやさしい瞳で私をじっとみつめる。
うれしいような、恥ずかしいような、幸せなような、逃げ出したいような気分……。
「マリィの処女を僕にくれる?」
……。
「はい」
声が震えていた。自分の震えている声を聞いて身体も震えてくる。
彼はやさしく微笑んで言う。
「大丈夫。レオンにしっかりやり方聞いてきたから」
……。
しっかり聞くって何を? どんなことを?
あ、わかった。
「レオンがお花を持っていくように言ったの?」
「あはは。わかった?」
ミシェルは楽しそうに笑った。私もおかしくて笑った。そして彼はポケットから何か探し出して、言った。
「これももらってきた」
……?
「これはなに?」
「コンドーム」
へぇ……。