第6章 たましいあげる
彼は少し首をかしげて私の話を待った。私は先を続ける。
「たましい」
「ちょっ、ちょっと待て」
突然ハッとした表情に変わり、彼は私の言葉を止めた。彼が少しでもあわてたところを初めて見たので、私はちょっとびっくりした。そして一瞬だけ気まずそうな顔をして、いつもの調子にもどる。
「君がなにを言おうとしたかは知らないが……。たましいあげる、だけは間違っても言うな。いらないから」
「いらないんですか……」
「いらない」
「どうして?」
「……そういうことは聞かない約束をした」
「たましいって何?」
「……」
無視された!
よくわからないものだけど、いらないとはっきり言われるとなぜかむかつく。
ていうか、あれって約束じゃなくてお願いじゃなかった?
約束のくちづけをしたから約束なの?
なんかずるくない?
「あ、そうだ」
ミシェルがなにか思いついたようにつぶやいた。私の顔を見て言う。
「別のものをもらう」
「別のもの……?」
「うん」
そして彼は少しおもしろそうにフフッと笑った。
「……なに?」
「ひみつ」
「……」
「準備もあるし……、それは今度の土曜日に」