第4章 お砂糖多め
ある日、店番をしているとレオンが買い物に来た。
「女の子の好きそうなケーキを、えーっと8コかな」
「ありがとうございます。ご予算は?」
「高いのから適当に詰めて」
相変わらず景気がよさそうだ。
「マリィちゃん、最近ミシェルと付き合ってるでしょ?」
「え、えぇまあ。たまにお茶を」
「ふぅーん」
レオンは意味ありげに微笑む。
「あいつ変じゃない?」
「変、というと?」
「ん、ちょっと変わってるっていうかさぁ」
すごく変わってるよ……。
「普通じゃないっていうかさぁ」
普通じゃないよ……。
「あいつ、昔さぁ……。いや、まあいいや」
「……? なんですか?」
「いや、マリィちゃん気にするといけないから」
「もう気になってます」
「いやー、でもなぁ……。聞きたい?」
レオンは私の目をのぞきこんでにっこりと微笑む。私は答える。
「聞きたいです」
「あいつ子どものとき、俺にキスしたんだよねー」
「……」
聞くんじゃなかった……。
レオンは楽しそうに笑う。
「ってウソだよー。びっくりした?」
「あはは……」
そしていつものように「また来るね!」と笑顔で手を振って帰った。
いまの話、本当に冗談なのかな?
ミシェルってもしかして男の人のほうが好きなんじゃ……。
こないだ私とキスしたとき「女としたのは初めて」って言ってたし……。
あの後、うちに来てもお茶を飲むだけでキスしたりすることもないし……。
私としたのはなんか単なる儀式だったのかなぁ。
じゃあこれ以上進展することもないのかなぁ……。
私はちょっとがっかりする。
っていうか、そんなことよりも。
あれ? どっちが大きい問題?