第3章 燃える夜空
「見た?」
彼は少し首を傾けて私の目をのぞきこんだ。
「なにを?」
私は笑顔を作って答える。
なんとなく、なぜだろう。
なんとなく彼の足元を見てしまった。
影がなかった。
私にはあるのに。
彼はフッと少しおもしろそうに笑った。
「しまったな、忘れてた」
彼がそう言うと足元に影が浮かんだ。彼は話を続ける。
「面倒なのに見られちゃったな…・・・。君、こんなところで何しているんだ?」
そうだ、私は何していたんだろう。
私は右手に握ったままの封筒に気づいた。
「これ、請求書を届けに来たんです」
彼はその封筒をさっと私から取り上げる。そして目の高さに持ち上げ、中身を透かして見るようなしぐさをする。パッと手を離すと封筒はひらひらと舞い落ちた。そして地面に着く直前に青い炎に包まれ、あっというまに跡形もなく燃え尽きた。
「えぇぇ」
私はマヌケな声をあげる。
彼はちょっとバカにしたように笑う。
「どうせ燃えちゃったんだ。怒られやしない」
それもそうだ。
「まあ、いまちょっと忙しいんだ。後で君の部屋に行くから」
そう言って彼は背中の翼を広げ、さっと飛び立ち夜空に消えた。