第22章 *Line feat.赤司
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「お…おわ、ったぁ…!」
苦悩の末終わったのは、カラスが巣に帰ろうとしている時だった。
黄金色が教室いっぱいを包む中、私はぐーっと伸びをする。
「ふー、疲れたぁっ」
「勉強を教えるのに、ここまで苦労したのは初めてだよ…」
「うっ…!ご、ごめん」
赤司くんも疲労を見せながら、ふうっと息を吐き出していた。
「謝らなくていい。なんだかんだで、楽しかったからな」
「へえ…そうなの?」
理解力の乏しい人に勉強を教えるのは、あまり楽しくない気がするけど。
変わり者ですね。……人のこと言えないか。
「そうだ、遠野、最後に一つだけいいかな?」
「ん?いいよ〜?」
ここまで付き合ってもらったんだから、今度は私の番だと思った。
赤司くんは黒板に近づいていき、大きめの文字をチョークで書き込む。
人みたいな漢字と、十みたいな漢字。
人の方は直線だけで書かれてて、十の方は上が少し長い。
「ここに一本線を足すと、言葉になる。何かわかるか?」
「全然さっぱり」
「少し考える努力をしろ」
ボーナス問題なのに、怒られた…。
でも、頭を使うようなのは得意じゃないからなぁ…。