第4章 *曖昧Boundary feat.氷室
「それに、顔にも出てたしね。」
「…そんなに分かりやすいつもりは、なかったんだけどな。」
恥ずかしかったのか、俯き気味になり、耳を赤くする辰也。
普段は照れることなんて中々ないから、嬉しかった。
「そりゃあ、彼女ですから。」
そう言った時ちょうど、電車が止まる。
どこかの駅に着いたようだ。
まだ降りる場所ではないので、ドアからできるだけ離れつつ、降りる人、乗る人を眺める。
…乗る人が結構多かったせいか、電車は、あっという間に満員となった。
「わ…、狭い。」
「香奈、大丈夫?」
辰也はこんな人混みの中でも、しっかりと私の手を握って、離さないでいてくれる。
「うん、大丈夫…───わっ!」
対する私は、大丈夫、と言ったのに、全然大丈夫じゃなかった。
辰也が後ろから押されたらしく、二人の距離がもっと狭まったからだ。
私の後ろはちょうどドアだから、まるで壁ドンみたいな状況。
…お互い望んでないけど。