第4章 *曖昧Boundary feat.氷室
「香奈、ごめん。……香奈?」
それでも、状況が状況なわけで。
無駄に意識しちゃって、ドキドキした。
「もしかして、どこか痛いところとか…」
「ち、違うの。ごめん…その、ちか、くて。」
下を向いてぼそぼそと言っても、辰也にはちゃんと聞こえたらしい。
両手で頬を包んで、上を向かされる。
「…すごい真っ赤。」
辰也は、私の表情を見てくすくすと笑った。
形勢逆転。
さっきは辰也の方が照れてたのに、今ではもう逆になっている。
「これでしばらくは、香奈の照れ顔を見ていられそうだね。」
「あ、あんまり…見ないでよ。」
ちょっと悔しい、けど。
この状況が続けばいいのにと、そう思っている自分も、どこかにいた気がした。
*曖昧Boundary*
どこからが事故で、
どこからが望んでいたことか。
境界線は、今ではもう曖昧なまま。