第5章 シンデレラ
次に1匹だけ残しておいた大きなネズミに魔法の杖でさわりました。
「3.2.1.シャララララーン☆」
すると今度は目元の黒い笑みを浮かべた御者に早変わりです。
「シャラシャラうっせーな!轢くぞ!!」
「轢く!?」
「えぇ!?何なんスか、この御者…。怖いんスけど…」
木村も魔法使いの黄瀬も、すっかり物騒なことを口にする御者に怯えてしまいました。
「……ま、まあ気を取り直して最後の仕上げっスね!3.2.1.シャララララーン☆」
黄瀬が魔法の杖を一振りすると、みすぼらしい服はたちまち光り輝く美しいドレスに、ボロボロな靴は小さくて綺麗なガラスの靴に変わりました。
「わぁぁ…!魔法使いさん、本当にありがとう!!」
「いえいえ、こんなのお安い御用っスよ☆ 木村っち、舞踏会楽しんできてね!その代わり、この魔法は12時までしか続かないから、それを忘れちゃ駄目っスよ?」
「はい!じゃあ、行ってきます」
木村は黄瀬にもう一度お辞儀をしながらお礼を言って、カボチャの馬車へ乗り込みました。
「俺、この後みゆみゆのライブ行かなきゃだから、飛ばすぞ!」
「えっ、みゆみゆのライブ……?(何のことだろう…?)」
御者の発言に疑問を抱きながらも、木村は馬車の激しい揺れに身を任せました。(任せるしかありませんでした)
(うっ……、揺れ過ぎて吐きそう……)