第2章 ヘンゼルとグレーテル
しばらくたったある日、緑間の愛用していたメガネが無くなってしまいました。
妹のさつきが、緑間の寝ている隙をついて壊してしまったのです。
メガネ無しの緑間は、どちらが大輝でどちらがさつきか見分けがつかないほどの視力の悪さでした。
それからまたしばらく経ったある日、緑間は大輝を入れた鳥籠にやってきて言いました。
「どうだ青峰、少しは太ったか?さあ、指を出してみろ」
緑間の目が悪いのを良いことに、大輝は指の代わりにスープの出汁がらの鳥の骨を出しました。
緑間はその骨を指だと思い込んでしまいました。
「やれやれ、まだこの程度か。更に人事を尽くすしかないな」
緑間は今までよりもっと豪華な食事を大輝に与えました。
しかし、いくら料理に人事を尽くしても、ちっともききめがありません。
緑間はとうとう待ちきれなくなりました。
「妥協するのは本望ではないが、この際仕方あるまい。貴様を大鍋で茹で、食べてやろう。桃井!急いで大鍋に水を入れろ!水を入れたら、次は火を焚くのだよ」
悲しいことに、さつきは兄の大輝を料理するために、火を焚かなければなりません。
さつきはしくしくと泣き出しました。
(こんな事なら森の中で狼に食べられて死んだ方がマシよ。それならだいちゃんと一緒に死ねたのに…っ!)