第3章 彼にとってのその日
「リナ。
まだしばらく終わらないから、
先に寝てなさい。」
もう完全に落ちかけたところで
声をかけてしまったようで、
リオは慌てたように
顔をあげた。
「まだかかるの?
でもダメ。起きてる。」
眠さからか、
俺に言っているのか
自分自身に
言い聞かせているのかは
わからなかったし、
きっとリオも
わかっていないのだろう。
そんな姿がどうにも微笑ましくて、
つい笑みがこぼれる。
そんな彼女に触れたくなり
ベッドへ腰掛けた。
そっと髪を撫でると、
睡魔と戦っていた険しい表情から
フッと力が抜けた。
あぁ、寝るな。
こんな無防備な寝顔を
見られるのも
自分の特権だと思うと、
幸せな気持ちが
湧き上がる。
こんな幸せを
感じることなど、
とっくの昔に
諦めていたはずなのに。
リナの寝顔を
見ていると、
ただの人間としての
感情が湧き上がる。
愛おしい。
そんな幻想にも近い感情を
再び自分が抱く日が
くるとは思わなかった。