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あなたへの月【T&B】

第3章 Lost in the city.




「あの……」
 と、一人で納得していたわたしに、少年から声がかかる。そちらを見上げて首を傾げれば、彼は控えめに口を開く。
「よかったら、僕……探しましょうか?」
「え?」
「あ、ええと……今、僕、その……暇、なので?」
 驚いて聞き返すと、わたしに気を使わせないようにだろうか、言葉を選びながら、彼がそう続けた。一人で待っているよりは、その方がはやく会えるかもしれないけれど……初対面のひとに、そこまで頼ってしまってもいいものなのかしら、と頭を悩ませる。
 けれどわたしの思考を読んだかのようなタイミングで、彼は小さく笑みを浮かべて。
「大丈夫、ですよ。弟さん、どんなひとなんですか?」
 わたしを安心させるように、優しくそう尋ねてくれた。
 そこまでされてしまえば断るのも失礼に思えてしまって、結局わたしは、名前も知らない少年を頼ることにしたのだった。

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