第2章 I'm home!
わたしが目覚めたそこは、やはり病院だったらしい。あのあと様々な検査を受け、異常がないと判断されたわたしはバーナビーに連れられ、彼の自宅を訪れていた。
独り暮らしだというそこは予想に反し広い部屋で、あまり物をおいていないようだ。
「なんだか、少し寂しいわね」
「そうですか?」
ぽつりと呟いたのを拾われてしまった。返ってきた不思議そうな言葉に、小さく頷いて見せる。
すると彼は、なら、とわたしに提案してくれた。
「一緒に買い物にいきましょう。家具でもなんでも、好きなものを選んでください」
にこりと優しく、幸せそうな笑みを浮かべるバーナ
ビー。だけど、わたしが選んでしまってもいいものかと頭を
悩ませる。
だってここは、彼の家で……。
「言っておきますが」
「え?」
「今日からここは、貴女の家でもあるんです。変な遠慮はしないでくださいよ?」
わたしの心を見透かしたように釘をさしてくるバーナビーに、驚いて言葉を失ってしまう。ど、どうしてわかったのかしら?
おろおろと視線をさ迷わせていると、バーナビーがくすりと小さく吹き出した。
「顔にかいてありますよ、姉さん」
それを聞いて、はっ、と瞬く。
そうだ、彼は、わたしの弟だった。
「だ、だけど……わたし、本当に、いいの?」
ここに住んで。そう続ければ、彼は当然です、と怒ったような声で返してくれた。
「姉さんは、僕の姉さんなんです。きょうだいが一緒に住むのは、普通のことでしょう?」
拗ねたような弟にぎゅ、と指先を捕まれ、きゅんと胸をならしてしまう。成人男性への感情としてはおかしいかもしれないけれど、彼はわたしの、弟らしいから……なんだか、かわいくて仕方がない、なんて。
「姉さんが目を覚ましてくれて……またこうして一緒に過ごせるのが、本当に嬉しいんです。だから、そんなこと、言わないでください」
「……うん。ごめんなさい、バーナビー」
それから、ありがとう。自然浮かぶ笑みと共に伝えると、わかればいいんです、とちょっぴり上から目線で許してもらえたみたい。