第1章 プレゼントを贈ろう!
エルヴィンが昼食へ向かう為、廊下を歩いていると
前方から何やら不機嫌そうなナナシが歩いてくるのが見え、
反射的に声を掛ける。
「やぁ、ナナシ。今から昼食かい?一緒に行こう」
「あぁ、そうだな」
二人が並んで歩き出すと、
ナナシはプリプリ怒りながら服の一部が盗難にあったのだと
エルヴィンに訴えた。
「今朝早くにモブリットとリヴァイ班の四人が私の所へ来て、
『何か使っているものを下さい』と言ってきたんだ。
何に使うのかも言わないし困ったんだが、
皆真剣な顔をして頼み込んできたからついあげてしまった。
それは後悔しておらぬ。
だが、洗濯した着物が盗難にあってしまったのだ!
犯人は未だ捕まえられておらぬが、
エルヴィンも探すのを手伝ってくれ。
これは兵団内の誰かの犯行に違いないのだ」
「・・・そ、そうか。それは災難だったね・・・・」
言えない・・・・。
その全部がエルヴィンの手元にあるなど、絶対言えない。
モブリットとリヴァイ班が貰ったものの
使用用途を言わなかったのは正しい判断だったと思う。
きっとエルヴィンにあげるためだと言っていたら、
ナナシは渡さなかっただろう。
「終いには、リヴァイとミケが私のした・・・・洗濯物を
盗ろうとしておったのだ。
あの二人の気が狂ったのかとも思ったが・・・ついカッとなって
事情も聞かずに沈めてしまった。・・・どうしよう」
エルヴィンの身体からザァァッと血の気が引く。
事情も聞かずに沈めたという事は、精鋭二人がナナシによって
瞬殺されたという事だ。
末恐ろしい・・・。
二人が生きていることを願いつつ、
エルヴィンは戦利品を死守するため沈黙を貫いた。