第1章 プレゼントを贈ろう!
「あやつらが起きたら、
締め上げて誰の差し金か吐かせぬとな・・・。
おちおち寝てもいられん」
「それだけはやめてやってくれ。二人が死んでしまう」
「・・・・・エルヴィン、
お主部下の奇行が何故起こったのか心当たりはないのか?」
胡乱げな目で見られエルヴィンは内心ギクリとするが、
それをお頸にも出さず笑顔で返す。
「さぁ?
いくら私が団長であっても全ての事を関知している訳じゃないからね」
「・・・・・・・・・・・・そうか」
納得いっていない様子のナナシを横目で見ていると、
兵士から「団長!お誕生日おめでとうございます!」と声を掛けられ、
ビクッとする。
何て間の悪い・・・と思いつつも、
声を掛けてくれた兵士にエルヴィンは「ありがとう」と謝意を表した。
隣にいるナナシをそっと盗み見ると、
彼は目を丸くして驚いているようだった。
「・・・お主は今日が誕生日だったのか?」
「そうだよ。自分でもすっかり忘れていたんだが、
部下から『おめでとう』と言われて思い出したんだ。
この歳になるとそういうのはどうでも良くなってしまうからね」
「・・・ふぅーん・・・。それはおめでとう」
素っ気ない感じだったが、
一応ナナシから「おめでとう」と言ってもらえたので、
エルヴィンは笑顔で「ありがとう」と返す。
それ以降ナナシはエルヴィンが部下達からプレゼントを貰う様子を
黙って見つめているだけで、何も言ってこなかった。
エルヴィンとしては、ナナシからも何か無いかな~?と
ちょっぴり期待をしたが、ついさっき誕生日だと知ったのだから
あるはずないかと肩を落とす。
今は隣にナナシがいてくれるだけで充分だと思うことにした。