第2章 全ての奇跡に感謝を・・・
酒の瓶を開けようとした時、
コンコンとノック音が響き扉を開けると紅茶を持ったナナバが
笑顔で入ってきた。
「やっほー、ちょっとお茶にしない?」
彼女の言葉に「こんな時間に?」と思わず時計を見ると、
時刻は午後十一時近くだった。
ナナバは困惑するエルヴィン達を無視して、
強引に紅茶をテーブルへ置くとエルヴィンにニコッと笑いかける。
「嫌なら別に良いんだよ?ただし、後悔しても知らないし、
後で文句も受け付けないからね。
用意された物は私やハンジが美味しく頂くから!」
一体何の話だと首を傾げていると、
開け放たれた廊下から香ばしい甘い匂いが漂ってきて視線をやると、
扉の所にケーキを持ったナナシが立っていた。
持っているホールケーキは茶色い色合いで華やかさは無かったが、
出来たてだというのは一目瞭然だった。
恥ずかしそうに頬を染めているナナシの背後からハンジも現れ、
「美味しそうだよね~」と言いながら執務室に入る。
「・・・・急だったから、見栄えが良いものは作れなかったが、
味は多分大丈夫だ」
ふわりと香る甘い匂いに、エルヴィンはゴクリと喉を鳴らせる。
わざわざ自分の為にケーキを作ってくれたナナシを
今すぐ頂いてしまいたい!という衝動に駆られたが、
それをやってしまったら彼の心も無碍にしてしまうので
必死に堪えた。
「ナナシ、何かエルヴィン達はこれから酒盛りしたいらしいから、
ケーキはうちらで食べ・・・」
「そんな事一言も言っていないぞ、ナナバ!
丁度甘いものが食べたいと思ってた所なんだ!
早速頂こう!」
ナナバの言葉を遮って否定したエルヴィンは、
テーブルに出した酒とグラスも急いで片付ける。
まさか、ナナシからサプライズバースデーケーキを
貰えるとは思っていなかったので、心が激しく動揺していた。
ナナシは普段からつれない態度ばかりなのに、
時々このように人を喜ばせることをしてくれるから
質が悪いと思う。
正しくツンデレだっ!!
誕生日の日にうっかりギャップ萌えを
理解するエルヴィンだった。