第2章 全ての奇跡に感謝を・・・
結局、ナナシが用意したケーキはホールだったので
リヴァイ、ミケ、ハンジ、ナナバもご相伴に預かる事になった。
ケーキを六等分に切り分けていると、
ミケはスンスンと匂いを嗅いで
「もしかして、これは栗か?」と呟いた。
「当たりだ、流石ミケ。マロンケーキだ。
昼間お主とリヴァイに栗拾いを手伝ってもらっただろう?
あれを使っている」
意外なケーキの材料に
リヴァイとミケは目を丸くしてケーキを凝視する。
昼間強制労働で拾わされた栗だとわかると少し複雑だが、
エルヴィンの誕生日ケーキの為だと思うと納得がいく。
それならそうと昼間言えよ、と思った。
「つーか、あの栗拾いが手伝いってレベルだったか?
割りと重労働だったぞ?」
「何を言う、訓練より楽だっただろう?」
リヴァイが不満そうに言ったのでナナシが切り返すと、
ミケがげんなりした様子でポツリと零す。
「・・・手足に錘を付けられた時は囚人の気持ちがわかったがな」
その言葉に室内がシーンと静まり返ったが、
ハンジが「美味しいケーキが食べられるんだから良いじゃない」と
笑い飛ばしてケーキを食す事になった。
食べると栗の深い味わいが口内に広がり、
全員がうっとりと至福に浸る。
甘いものは高級品なので、
誕生日といえどこんな甘いケーキを食べられるのは
上流階級の人間だけだった。
恐らくナナシが自腹をきって砂糖などを用意したのだろう。
その気持ちだけで涙が出るほどエルヴィンは嬉しかった。
「これ、お酒も入っているのか?」
「よく気づいたな。ケーキ作りでも酒があると無いとでは
かなり変わるのだぞ」
ほんのりお酒の味がしたのでエルヴィンが問うと、
ナナシは笑ってそう返した。
こうやって仲間と笑い合いながら過ごす誕生日も悪くないなと思ったエルヴィンは、
綺麗な微笑を浮かべて今日という奇跡に「ありがとう」と感謝した。