第19章 夏の大会
(嘘、だ……)
4回戦の対戦校は明川学園。野球においては全くの無名校のはずだ。
(うちが、2点の先制を許すなんて……)
降谷君はまだ1年生で、経験が浅いのはわかる。それでも、この状況を信じられなかった。4回まで青道は無得点、降谷君も交代となり、出てきたのは1年の沢村君。
「危なあああい!」「どこ投げてんだ沢村ぁーっ!」
牽制球を危うく暴投しかけている沢村君を見て、冷や汗をかく。けど、そんな心配もいらなかったようだ。
サードフライにランナーをうちとり、攻守交代。
「リューマ! 太郎! うちらの攻撃始まるから、応援の準備して!!」
バッターは3番の伊佐敷先輩から。インハイのボール球を無理矢理打ち、二塁打。4番の結城先輩はフォアボールで歩かされる。
(まあ、正しい選択だよね)
明川のピッチャーはすごくコントロールが良いけど、やはり結城先輩のスイングにはのまれたようだ。
そして、5番の増子先輩は手堅くバント。1アウト1、3塁のチャンスの場面で……
『6番キャッチャー御幸君』
うぐいす嬢の声が響く。
「みなさん! 狙い撃ち、いきまーす!!」
狙いうちのリーダーをやりながら、私は試合をみる。
わずか2球でツーストライクまで追い込まれ、余裕がないのだろうか。御幸は高めの釣り球にまで手を出してしまう。
(御幸! 打て! ここで試合を振り出しに……)
4球目、アウトローへの変化球を見事に捉え、試合を振り出しに戻す三塁打。
(御幸……!)
得点時の応援をしながらも、御幸が打ったという事実に胸が温かくなった……。
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試合は7対2で青道が勝った。
(危ない場面もあったけど、蓋を開ければ5点差か。……あとは投手がどれだけ投げられるかだな)
次の試合、強豪校の市大三と俊平の薬師の試合だ。
(この目で見届けよう、俊平の勇姿を)
私はこの時、薬師は負けるものだとばかり思っていた。
市大三エース真中投手の負傷退場、9回裏逆転サヨナラタイムリーで薬師が準々決勝に駒を進めることとなった。13対12の壮絶な乱打戦を制したのは、薬師高校だった……。
(俊平……!)
私は試合後の俊平を出待ちしようと、一旦球場の外に出た。