第18章 夏までのカウントダウン
「……どうも」
降谷君は何も見ていなかったかのように、自然な流れで私の隣にちょこんと座った。
さすがの倉持も私を解放し、私は肩で息をする。
「降谷君、どうして屋上に?」
「僕、木下先輩は御幸先輩と恋人同士だと思ってました」
「?!」
「……けど、間違ってたみたいで。すみません」
人の話を聞かない降谷君。悪びれもなくぺこりと頭を下げる。
「いや、私は応援団でいる間は彼氏つくらないよ?」
「そーなのかよ?」
「ん。なんか、伝統? ルール? そんな感じのがあるみたいでさ」
倉持はあぐらをかいて頬杖をつきながら私を見る。
「……何?」
「俺も、お前と御幸は付き合ってんのかと思ってた」
「まさか! 私の覚悟はそこまで甘くないですー」
とは言いつつも、考え込んでしまう。
(応援団じゃなければ、私は御幸と付き合えてたのかな。お互い好きなんだってわかってるんだから……)
でも、応援団がなければ御幸とは知り合えていなかった。それに、御幸自身も野球をやっている間は彼女を作らないだろうし。
「ほら! そういう惚れた腫れたの話より、野球だよ! 試合だよ! 私は甲子園の舞台で応援がしてみたいからさ! 倉持、頼んだよ!! 降谷君もねっ」
「おう、任せろって!」
「……誰にも負けません……!」
そうだ、そんなことを気にしている場合じゃない。
(3年最後の夏が、始まるんだから)
時は流れ、夏の予選、開幕!!