第17章 春の大会 〜初陣〜
私のうぬぼれでなければ、私の聞き間違いでなければ。
(今、御幸は私のことを好きだと……)
私を抱く御幸の手に力が入る。
「嘘、だ……。御幸、が……そんなぁ……」
感情が昂り、それと同時に涙と嗚咽が出てきた。
「今から俺が話すこと、全部この場だけの話だ。忘れてくれ」
「うん」
「お前を応援団に誘って、忙しい日々に巻き込んだこと、悪かったと思ってた。ほぼ、騙して入れたみたいなもんだしな。……けど、木下は一人で頑張って、俺たちを、応援してくれて……」
「……」
「そんな木下を、俺は好きになったんだ」
これが、嬉し泣きなのかな。こんな風に、気持ちが通じ合うことなんてなかったから。初めてだから……。
「私も、御幸には、すごく助けられたし。それに、私は御幸のお陰で、また夢を追いかけられるから。自分の体が動かなくても、おこがましいかもしれないけど、応援することで運動部の人と同じ目標を追いかけられるから……!」
それ以上は、口が塞がれたために話せなかった。私も、御幸もゆっくりと目を閉じた。
ゆっくりとお互いに離れ、なんとも言い難い空気になる。
「けどまあ、俺としては野球やってる間に付き合うとかそういうのは……」
「わ、私もそういうのは先輩に禁止だと言われてるから……」
「けど、約束する。この気持ちは変わらないこと。俺の隣を空けておくから、木下の隣を俺にくれ」
御幸の真剣な眼差しに、私は強く頷いた。
「行こうな、甲子園」