第17章 春の大会 〜初陣〜
息苦しい。全身が熱い。まるで自分の体ではないのでは? と錯覚するほど体が動かない。まぶたを開こうとしても、まぶたが重くて開かない。
(私、無理してたのかな)
今思えば、応援団に入ったあの日から自分の体に鞭をうって頑張っていたような気がする。
1人だから。頼れる人はいないから。全てを自分がやらなきゃいけない。それに、御幸の期待に応えたい。
そんな気持ちで、私は自分の体の悲鳴を無視していた。いや、気づかないふりをしていた。
(そのツケが今日の大会で回ってきたのか)
「……が、やらなきゃ……」
(それでも、私がやらなきゃ)
「全部を背負ってたのか。……ごめん、木下」
「御幸……?」
彼の声が私のまぶたを軽くした。目の前には御幸の切なげな顔が。
「倒れるまで、頑張ってたんだな」
御幸の指がそっと私の頬に触れる。
「……ここは?」
「俺の部屋。寮の前で倒れてたから、一旦ここに運んだんだよ」
「!!」
私が起き上がろうとすると、御幸がそれを優しく制す。
「だーめ。まだ寝てろ」
「でも、迷惑……」
「迷惑なんかじゃねえよ。むしろ、フラフラの状態で歩かれる方が心配」
「ごめん……」
布団に潜り込もうとして気がつく事実。
(このベッド、普段から御幸が寝てるベッド……?!)
ここの部屋は御幸1人の部屋だ。ルームメイトは存在しない。
「ーっ!」
先程までとは違う熱で頬が火照る。見れば見るほど緊張してくる御幸の部屋。生活感漂う彼の部屋の中にいるんだ。そんなの、緊張しないはずがない。
(せめて倉持の部屋なら気が楽なのに)
「あ、あの、後輩2人は?」
「近くの薬局まで買い出し。木下のこと、すげー心配してたよ」
「そう、なんだ……」
喜びと同時に申し訳なさも湧いてくる。こんなもんで倒れる先輩、不甲斐ないよ……。
「木下にも、たまには休養が必要なんだよ。応援団部始まってから、オフってあったか?」
「大晦日とお正月の二日間くらいは休んだよ」
「大勢ならまだしも、一人でそんなに部活やってたら精神面も身体面も駄目になる。……もう少し、自分に優しくなれよ」
「!」
「今日はいっぱい甘やかしてやるから」