第17章 春の大会 〜初陣〜
春の都大会準々決勝、市大三高戦。観客の入りは上々。
「次のバッターは御幸です! 狙いうち、行きます!!」
応援しながら見る打席。
(打て、御幸!)
1回の表で6番バッターの御幸にまで打席が回ってきているんだ。流れは確実にうち!
カウントは2-1。2球連続でアウトコースを突かれている御幸。
「お前が打たなきゃ誰が打つ!!」
3球目。
(インコースにスライダー!)
甲高い音が鳴り響く。打球は空高く飛び、グングンとその飛距離を伸ばしていく。
(届けーっ)
ボールはバックスタンドに吸い込まれていき、相手ピッチャーは呆然とその様子を見ているだけ。
「入ったあああああ!!」
一気に盛り上がる青道スタンド。私達応援団は喜ぶ暇もなく、得点時の応援に切り替えて声を出す。
「ナイスバッチ御幸ーーっ!!」
内角のスライダーを完璧にとらえ、ホームランにするだなんて。読んでいたとしか思えない。
(しかも、スライダーは相手ピッチャーのウィニングショットだし)
これだから、応援していて面白い。楽しい。
甲子園を目指せるチームなんだから……。
しかし、蓋を開けてみれば16-10。なんとか打ち勝ったものの、どうしても不安が残る。
(御幸ももどかしいだろうな。丹波先輩も川上君もよく投げている方だけど、もう少し肝の据わったピッチャーが欲しいかも)
まあ、それは私達応援団の考えることではないか。
「佐々木君も新島君もお疲れ様」
2人は小さく私に頭を下げる。
「三人でラーメンでも食べに行く?」
私の一言に2人はお互いにハイタッチをし合う。
(仲良くなってるじゃん)
後輩の面倒も見なきゃいけない。
「大変だなあ」