第15章 お騒がせな新入生達
「鈴村さん?!」
予想外の流れに私が戸惑う。てっきり、女子団部からリンチに遭う流れだと思っていたから、鈴村さんのセリフには驚いた。
(でも、間違いじゃない)
「木下先輩、私は先輩がライバルでも、そういうことは考えないで応援頑張ります。大好きな一也先輩の野球に迷惑はかけません」
「ありがとう、鈴村さん」
私はそう言ってから花野さんに向き直る。
やっぱり美人だ。御幸に似合うのはこういう美人さんだと思う。
(それでも、貴方には何故か負けたくないよ)
「あたしが今ムカついてんのは、木下、あんたよりも……」
花野さんの目が狂気に満ちる。
「亜美、あんたよっ!」
咄嗟の行動だった。
「木下先輩っ」
花野さんの平手打ちから鈴村さんを守った。その代わりに食らったのはいいんだけど、そこで足がもつれ、私は頭からコンクリートの地面に崩れ落ちた。
強い衝撃が頭蓋骨に加わり、骨の軋みを感じる。目の前が霞んで見えてきて、私は手で頭を押さえる。
(……)
頬に温かい感触がして、手で触れてみるとそれは血だった。おそらく、花野さんの爪で頬に傷がついたものだろう。
「あ、頭はまずいですよ!」
女子団部の部長の山田さんが私の元に駆け寄ってきて、私の体を支える。
「ち、違う……。そんなつもりじゃなかったのよ……大体、木下さんのことを傷つけるつもりなんて」
(頭が、痛い……)
「木下じゃない?」
そんな声がして、声の主が私の元に歩み寄ってくる。
「……いいよ、俺が運ぶから。頭だからまずいでしょ」
(誰……?)
「カオリを後で向かわせますんで、はい。……よろしくお願いします、小湊先輩」
(小湊亮介先輩……)
私は小湊先輩とともに、保健室に向かった。