第3章 詰襟デビュー
結局、御幸君に言われた言葉は頭の片隅に置いておいたままだった。
新学期が始まり、今度は学校に行くことが強制になる。
階段を上り下りする時、男子応援団部募集の張り紙が毎回目に入った。
教室に着くと、始業10分前なのにひとはまばらだ。初日から早速、朝練のある部活が多いのだろうか。
「木下さん、おはよ」
何てことを考えていたら、メガネをかけた御幸君の姿が。
夏休み中はユニホームとスポーツサングラスの姿しか見ていなかったから、なんだか新鮮に感じてしまう。
「お、おはよう」
「考えてくれた? 応援団」
「ちょっとは……うん、考えたよ」
「なら、良かったわ! 今日の授業終わったら、屋上で応援団の先輩待ってるから、行ってこいよ」
(はあ?)
まさか、この人……。
「私が入る前提で先輩とやらに説明したの?!」
「え、違うの?」
「決心ついてないから!」
「大丈夫大丈夫」
なんて無責任な男だ。私はもう、部活を辞めたくなんてないから。だから、気軽に運動部になんか入れないのに。
(それを、あんな男の利己的な理由で)
その上、全てを見透かしたかのごとく話してくるあいつの態度も気に障る。
(けどまあ、行くしかないかあ……)
夏のごとく照りつける太陽を窓越しに睨みつけながら、私は小さくため息をついた。