第15章 お騒がせな新入生達
「助けてくれるのかと思いきや、嵌められたんですよ! 確かに寝坊した俺も悪いとは思いますけど!!」
「あー、うん……」
寝坊したのは沢村君だけでなく御幸も。びびっている沢村君に対して、監督にバレることなく皆に紛れ込むことのできる方法があると沢村君をそそのかし、沢村君がそれを実行した瞬間に沢村君の存在を大声で叫んだと。
(サイテー)
そのせいで沢村君は練習に参加させてもらえていないそうだ。
(まあ、すぐに監督に謝りに行けばよかった話でもあるけど)
さすがに沢村君が可哀想だ。
「あの、私が練習後にキャッチボール付き合ってあげるから」
私の言葉に沢村君は目を潤ませて頭を下げてきた。
「ありがとうございます!! 本当にありがとうございます!!」
(なんか、犬みたいで可愛いな)
青道野球部の練習が終わり、約束の通り私と沢村君はキャッチボールを始めた。
応援の打ち合わせは……うん、キャッチボールの後でいいや。
「先輩凄いっすね!構えたところにドンピシャで飛んできますよ!?」
「これでもソフトボール部のキャッチャーだったからね!」
それにしても、キャッチミスこそしないけど。
(随分なクセ球を投げてくるなあ、沢村君)
同じフォームから繰り出されるボールなのに、1球ごとにどこに飛んでいくかが読めない。
(大物感漂うしね、この子)
「木下!!」
御幸の声がして、思わずビクッと体が跳ねる。
「あああ!!? 御幸一也貴様ぁ!!」
沢村君が憤慨しているのを完全に無視して、御幸が私の元に歩み寄ってきた。
「ど、どうも?」
「こんなバカのキャッチボールに付き合ってやってたのか」
「馬鹿とはなんだ!!」
「沢村! キャッチボールは終わり! 木下のこと困らせんな! お前は監督に許されるまで、壁とキャッチボールしてろ」
(辛辣!)
「そんなの虚しすぎるだろ!!」
というわけで、御幸の乱入により辛くもキャッチボールは5分で終了。
「あんまり意地悪しなくてもいいんじゃないの?」
私と御幸は自動販売機の隣のベンチに座る。
「……あいつ面白いからさ」
そういう御幸の目は子供のように輝いていた。
「もしかしたら、あいつが青道を助けるピッチャーになるかもしれねえな」